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仙台家庭裁判所 昭和58年(少ハ)6号 決定

少年 G・T(昭四二・三・五生)

主文

少年を中等少年院に戻して収容する。

理由

(申請の理由の要旨)

一  少年は、東北地方更正保護委員会の許可決定により、法定遵守事項の外に特別遵守事項として「シンナー類の吸引は絶対にしないこと。不良仲間との交遊をきつぱりと断つて真面目に働き、堅実な生活を続けること。祖父母、保護司の指導を素直に受け無断外泊など決してしないこと。」などを指定されて、昭和五八年五月一八日置賜学院を仮退院して前記住居地の祖父G・Nのもとに帰住し、昭和六二年三月四日を保護観察期間終了日として仙台保護観察所の保護観察下にある。

二  ところで少年は、昭和五八年五月二七日から同年九月末日頃までの間に数回にわたつて無断外泊したほか、同年一〇月六日から同月二〇日頃まで連続して無断外泊し、同年八月一八日自宅においてシンナーを吸引したほか前後一六回位自宅などで吸引し、同年一〇月頃数回無免許で賍物である自動二輪車を運転したものである。

三  少年の上記行為は、前記遵守事項に違反したものであり、しかも、同年八月二八日以降は徒食生活を送つて前記遵守事項違反行為を繰り返したものであり、祖父母も監護意欲を失なつていることなどを併せ考慮すると、現状において保護観察を継続して少年の更生を図ることは難しく、この際、少年を少年院に戻し矯正教育を施すことが相当と思料する。

(当裁判所の判断)

少年の保護事件記録、少年調査記録並びに当審判廷における保護者及び少年の供述によると、前記申請の理由の要旨記載一・二の事実ほか次の事実が認められる。

少年は、本件事件で昭和五八年一〇月二五日観護措置決定を受け、同年一一月一六日試験観察に付され、宮城県塩釜市内の実母のもとに引き取られたが、同月一九日にはそこを出て無断外泊を繰り返していたものである。

以上の事実によると、少年が前記特別遵守事項及び法定遵守事項に違反したことは明らかであり、更に、鑑別の結果、少年には緊張が緩みやすく怠惰なところがあることが指摘されていることや前記のとおり試験観察の成績も不良であつたことなどを併せ考慮すると、現状において少年を在宅処遇することは極めて困難であり、積極的な施設内処遇を施すことによつて矯正教育の効果を期待することが相当であると判断する。

なお、少年の非行性はさほど進んできているとはいえないので、少年の帰住先が定まり院内の成績が良好な場合は比較的早期に仮退院の措置を講じられるよう勧告する。

よつて、少年を中等少年院に戻して収容するのを相当と認め、犯罪者予防更生法四三条一項、少年審判規則五五条により、主文のとおり決定する。

(裁判官 河村潤治)

処遇勧告書〈省略〉

〔参考〕戻し収容申請書の申請の理由

少年は昭和五七年一二月二〇日仙台家庭裁判所において窃盗、ぐ犯、恐喝、毒物及び劇物取締法違反保護事件により中等少年院送致(一般短期処遇)の処分に付され四月余にわたる矯正教育を受けた後、当委員会の許可決定により、昭和五八年五月一八日置賜学院を仮退院して表記住居地の(祖父)G・Nのもとに帰住し、以来仙台保護観察所の保護観察下にあるところ、同五八年一〇月二一日付けで同保護観察所長から戻し収容の申出があつたので審理するに、

少年は、

(1) 昭和五八年五月二七日から同五八年九月末日ころまでの間数回にわたつて無断外泊したほか、同五八年一〇月六日から同五八年一〇月二〇日ころまで連続して無断外泊し(一般遵守事項第一号、特別遵守事項第五号違反)

(2) 同五八年八月一八日自宅においてシンナー(うすめ液)を吸引したほか前後一六回位自宅あるいは仙台市内の店舗便所内等においてシンナー又はゴム糊などを吸引し(一般遵守事項第二号、特別遵守事項第三号違反)

(3) 同五八年一〇月初めころから同五八年一〇月一四日ころまでの間、前後六回位公安委員会の免許を受けず、かつA(一七歳、仙台保護観察所一号観察中)が窃取した自動二輪車(○○○RZ×××)をその事情を知りながら借り受け、あえてこれを運転し(一般遵守事項第二号、特別遵守事項第四号違反)たものである。

上記の事実は、昭和五八年一〇月二一日仙台保護観察所保護観察官○○○○作成の少年に対する質問調書及び同五八年一〇月五日同保護観察官作成の祖母G・Y子に対する質問調書並びに少年にかかる一件記録によつて明らかである。

次に少年の仮退院中の行状についてみると、少年は仮退院後食堂の調理見習、スーパーマーケットの雑役夫、運送会社の作業人夫として、それぞれ短期間稼働したが、昭和五八年八月二八日以降は正当な理由がないまま友人の誘いに応じて遊び歩くなどの無為な生活に終始していたものであつて、この間保護観察官や保護司から再三にわたる指導を受けたにもかかわらず、これに従わずして上記一連の行為を重ねているものである。少年の実父母は離婚し、それぞれ再婚しているため少年の保護に任ずるものは祖父母のみであるが、この祖父母も少年の次第に深化してゆく気侭な行動に対処するすべがなく監護意欲を失ない、他に少年を保護する者を求めるに至つているが、現時点では他に代り得る保護者や社会資源も見当らない現状にある。

以上総合判断するに、少年の仮退院後の行状及びその性格並びに環境からみて、このまま放置すれば更に重大な遵守事項違反を重ねることが必至と思われる。

よつてこの際少年院に戻して収容し、再度の矯正教育を施し、更に徹底した社会規範の習得と自己統制力の涵養を期することが必要かつ相当であると認める。

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